第10章 あなたのためなら
ミーウとキッドはハッとして横を見た。いつの間にいたのか、1人の大男が木にもたれて2人を見ていた。
「……」
「……」
2人は黙って離れると、戦闘体勢をとって大男を見つめた。
大男はその様子を見て、クククッと笑った。
「邪魔をしたか? 悪かったな」
「……別に」
大男とキッドが言葉を交わしている間、張り詰めた空気が辺りに漂っている。
「……あなたは……誰?」
ミーウはただ者ではないだろうと直感で感じていた。ーーおそらく、大男はこの島に向かっていた海賊の一味の中の1人だろう。もう、この島に上陸してきたのだろうか。
「おれか? おれは……」
大男はニヤリと笑った。
「おれは“ヌンチャク”のアルファだ。名前くらい聞いたことがあるだろ?」
「な!?」
キッドは思わず後退りした。ーーキッドは海賊王になるために、他の海賊がどんなことをして懸賞金を上げているのかということを研究していた。海賊王になるということは海賊の中で1番高い懸賞金をかけられないといけないからだ。その研究の中で、キッドはアルファのことも知っていた。
「……まさか、あの海賊船がアルファの一味だったなんて……」
キッドは舌打ちをした。
「わたしも聞いたことある……。確か、海賊船の宝物とかを根こそぎ盗んだり、海軍の軍艦の食料を奪ったり……結構派手な海賊活動をしてるらしいわね」
ミーウはふーと息を吐いた。
「ただ、一般人には危害を加えないというところもあるみたいだけど?」