第10章 あなたのためなら
「海賊船が……この島に向かって海賊船が来ているんですよー!」
「何だって!?」
クザンは大楠の木の枝の上に立ち上がって海を見た。ーー確かに、竜国島に向かって一隻の船が進んでいる。
「あれは……」
「はい、おそらく海賊“ヌンチャク”のアルファの一味だと思われます」
「アルファ……」
「はい。最近、この南の海で海賊活動を始めた奴で、懸賞金はかけられたばかりです」
海兵の顔からは汗が吹き出て止まらない。クザンが持っている電伝虫も尋常ではないくらい汗をかいていた。
「懸賞金は?」
「懸賞金は……現時点で1000万ベリーです。しかし、あまりにも凶悪なため、さらに懸賞金が上乗せされるかもしれないと……」
「……」
クザンは少し考えた。
「ど、どういたしますか? クザン大将。まず、メアリー様とミーウ様に避難していただいた方が……」
「いや、その必要はない」
クザンは電伝虫越しに海兵に言い切った。
「は?」
「アルファはミーウに戦わせる。お前たちは手を出すな」
「は……はー!?」
駐屯所にいる海兵たちは一斉に叫んだ。
「ちょ、ちょっと待ってください! クザン大将ー! お考え直しを!」
「そうですよ! いくら、ミーウ様が毎日毎日クザン大将の厳しーい修行を受けているからと言っても、あのアルファには敵いません!」
「そ、それに、もしお怪我をされたら……どう責任をお取りになるつもりですか!?」
駐屯所ではクザンに対する海兵たちの抗議の声が叫ばれている。だが、クザンにはある考えがあった。
「ミーウなら大丈夫だ。ミルウィート」
「……はい、クザン大将……」