第10章 あなたのためなら
4人が大楠の下で遊んでいた時、港にある海軍駐屯所はとても騒がしかった。
「北西から竜国島に向かって船が来るぞ!」
「おかしい。貿易船だったら、この島に来る場合は必ず連絡があるはずなのに」
港に置いてある映像電伝虫の映像を見ていた2人の海兵は不審に思っていた。
「いや……あれは貿易船じゃない! 海賊船だー!」
見張り台の上から、望遠鏡で船を確認していた海兵が叫んだ。
「何だってー!?」
その情報を聞いて、駐屯所はさらに慌ただしくなってしまった。
「す、すぐにクザン大将に連絡を! それから、メアリー様とミーウ様にも……城にも連絡しろ! まずはお二方のお命が最優先だ!」
ちょっとした将校の位を持っている海兵が命令した。
「は!」
海兵たちは敬礼して、すぐにクザンに繋がる電伝虫をかけた。
「こちら、青雉。何か用か?」
「こちら、竜国島海軍駐屯所です。クザン大将、今、どちらにおられますか?」
海兵はなるべく焦らないように、落ち着いてクザンに連絡をした。
「今? 今はちょっと野暮用で外に出ているが?」
クザンはいつもと同じように、ミーウとアユナの見張りをしていた。だが、他の海兵には黙っているため誤魔化した。
「今すぐ駐屯所に来ていただけませんか? 海賊船が……」
「海賊船?」
クザンは大楠の太い木の枝に寝転びながら、海兵の必死そうな様子を怪訝そうに思っていた。