第10章 あなたのためなら
キッドとキラーはご飯を食べてからしばらくの間、食堂で向かい合って座っていた。
キッドは1人深刻そうにさっき聞こえたミーウの声のことを考えていた。
「キッド」
何やら難しい本を読んでいたキラーはいつもと様子が違うキッドを見た。
「何をそんなに考えているんだ? 何かあったのか?」
「……」
キッドはキラーを見て瞬きをした。
「……さっき……ミーウの声が聞こえた」
「は?」
キラーは驚いた様子で読んでいた本を閉じて、机の上にそっと置いた。
「どういうことだ?」
「……キラーに呼ばれた後、船の中に入ろうとしたらミーウの声が聞こえたんだよ。……同じことを言わせるんじゃねェ」
少し不機嫌そうな顔をしてキッドは眉を寄せた。
「……」
(……いつにも増して、不機嫌だな……)
航海を始めてからというものの、キッドとキラーは海軍にも海賊にも会っていないため、暇を持て余しているのだ。そのため、キッドは退屈で毎日不機嫌だった。それに加えて、いるはずのないミーウの声が聞こえるという謎の現象が発生し、頭を使うことを余儀なくされているため、さらに不機嫌になっている。
(まあ……仕方がないと言ったら仕方がないが……)
もともと、キッドは考えることが苦手だ。その苦手な行動をあえてしていて、なぜ声が聞こえるのか原因がわからないとなれば不機嫌にならないことはないだろう。ーー余程、イライラしているのが様子から察することができた。