第10章 あなたのためなら
ミーウとスレイジが話していた頃、南の海の上を一隻の船がゆっくりと、確実に〈偉大なる航路〉に向かって進んでいた。
「キッド、ご飯できたぞ」
キラーが甲板に出て、海を眺めていたキッドを呼んだ。
「あァ」
キッドはキラーを振り返って船の中に戻ろうとした。しかし……。
ーキッド……。
「!」
キッドはとっさに、さっきまで見ていた海を振り返った。
「……」
(ミーウ……なのか?)
ーーさっき聞こえた声は間違いなく、2週間前まで毎日聞いていたミーウの声だった。
「……」
(何で……おれのことをそんな悲しそうな声で呼ぶんだ……)
キッドは目を細めて遠くを見た。
「おい、キッド。ご飯いらないのか。冷めるぞ」
なかなか来ないキッドにイライラした様子のキラーが再び呼びに来た。
「……いる」
キッドはミーウから貰ったビブルカードの入ったネックレスを握り締めてから、船の中に入って行った。
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