第10章 あなたのためなら
キッドはイライラした様子で水を飲んだ。
「……」
ふと、キラーはキッドの胸元に光る物を見て瞬きをした。
「なあ、キッド」
「何だ」
キッドは不機嫌そうな顔をキラーに向けた。
「もしかしたら……そいつのせいなんじゃないのか?」
「あァ?」
キラーはキッドの胸元に光る物を指差した。
「昔、どこで聞いたか忘れたが……ビブルカードを人に渡す場合……」
キラーはキッドを見た。
「渡した人は渡された人のことを誰よりも大切に想っていると。だから、ビブルカードを持っている人は貰った人に会えるのだと。そして、たまにその人の声を聞くことができると。……そう聞いた」
キッドは呆然とした様子でキラーを見た。
「もしかしたら……ミーウは今、お前のことを想っているのかもしれないぞ」
「……」
キッドはビブルカードのネックレスを見つめた。キラキラとしたそれはまるで、ミーウの笑顔を表しているかのようだった。
「……」
ゆっくり、でもしっかりとビブルカードのネックレスを握り締めてキッドはキラーを見た。
「その話が本当なら……」
キラーは仮面の中で瞬きをした。
「おれも……ミーウの話をしていれば……あるいは想っていたら……あいつにおれの想いが伝わるってことか?」