第11章 朝帰り
こんな男と付き合っていてはいけないと思っていた。
ギャンブル依存症で、浪費家で借金まみれの男なのだ。
一緒になったとしても上手くいかないことは目に見えていた。
私は、タカシと離れなければいけないと思い始めていた。
だが、身体の相性がとても良くなかなか離れることができなかった。
そんなことを考えて歩いている時だった。
小さなトートバッグの中にある携帯が鳴ったのだ。
誰かと思って電話に出てみると、直樹からだったのだ。
「真帆、お前、今どこにいるんだ?」
「今、歩いてるわよ…」
「どこを歩いてるんだ?」
「ちょっと遠くまで散歩に行ったのよ…」
「早く帰ってこい、心配したんだぞ…」
「分かったわ、もう少しで着くから…」
そう言うと私は電話を切った。
タカシの居た工場から自宅までは歩いて15分くらいだった。
フラフラしながら自宅へと戻って玄関のドアを開けた。
すると、直樹が慌てて出迎えてくれる。
「真帆、どうしたって言うんだ?夜中に目が覚めたらお前が居なかったから心配したんだぞ」
「ごめんなさい…」
「心配して、何度も電話したのに出なかったじゃないか、どこに行ってたんだ?」
「タカシのところよ…」
「タカシのところだって!?」