第11章 朝帰り
私は、その話を半分眠った状態で聞いていたのだ。
常連客の佐藤さんはとタカシは余り仲が良くなかった。
佐藤さんは金遣いが荒く、ギャンブルに依存して借金まであるタカシをある意味心配していたのだ。
そこで、佐藤さんはタカシに工場の一角にある部屋を月3万で貸したらしい。
佐藤さんは、タカシにもっとしっかりとして欲しかったのだと私は思っていた。
「俺、佐藤さんは苦手なんだよな…」
「そうなの?確かにちょっと癖のある人だけどね…」
確かに佐藤さんはちょっと癖のある性格をしていた。
私が居酒屋みゆきに行くといつも私に声を掛けてくる。
「今度一緒に二人だけで飲みに行かないか?」
「え?佐藤さんと?」
「そうだよ、俺とだよ…嫌か?」
そう、佐藤さんは私を誘うのだ。
佐藤さんは年の頃50代後半の白髪交じりの頭をした男だった。
話を聞いていると、どうやら去年のクリスマスの日に20歳年の離れた奥さんが新しく若い男を作って家を出て行ってしまったらしいのだ。
その話を私は良く佐藤さんから聞かされていた。
そんなやり取りをタカシは店で何気に見ていたのだ。
「佐藤さんとは、絶対に飲みに行くなよ!!」
「分かってるわ…」
そんな会話をタカシと私は昨夜していた。
タカシは佐藤さんにも嫉妬している様だった。
私は、タカシのギャンブル依存症とアルコール依存症に気づいていた。