第10章 ある夜
それは、1度だけ直樹と一緒に居酒屋みゆきにホルモンを食べに行った時だった。
直樹はタカシの姿を見ると私にこう言ったのだ。
「真帆、お前の好きそうな男だよな、あの背の高いヤツ…」
私はそれを聞くとなんとも答えることができなかった。
直樹には完全に見抜かれていたのだ。
そんなこともあり、タカシと私の関係を直樹は知っていたのかも知れなかった。
「タカシのヤツ、真帆のことが好きなんじゃないのか?」
「え?そんなことないと思うわ…」
私はそう否定した。
事実、タカシからそんな言葉を聞いたことがなかったのだから。
タカシがピンポンダッシュして逃げ去った後、また私たちは愉しく飲みながら映画の話しなどをしていた。
愉しい時間はどんどん過ぎて行ってしまう。
時計を見ると夜の12時を少し回ったところだった。
私と直樹は寝る支度をし始めた。
私はテーブルに置いてあるグラスやお皿などを片付けてゆく。
それを、キッチンに運んで洗い物をした。
それを済ませると直樹と二人でキッチンで少しお喋りをしていた。
直樹は煙草に火を付けて煙草をくゆらせている。
私はそれを隣で見ていた。
私と直樹はちょっとした睡眠障害を抱えていた。
なので、病院で睡眠薬を処方されていた。
二人で眠る為にその睡眠薬をお互いミネラルウォーターで喉の奥に流し込んでゆく。