第10章 ある夜

私は、直樹と数か月ぶりにセックスをして、愉しく飲みながら談笑していた。
その時間は本当に愉しいものだった。

二人で映画の話しをして笑っていた時だった。
誰かが、私の家のチャイムを鳴らすのだ。

時計を見ると夜の10時半を少し回っていた。
私は、玄関に行きドアを開けてみた。

すると、そこには暗闇が広がり誰の姿もなかった。
仕方がないので部屋に戻ると、また玄関のチャイムが鳴るのだ。

私は、また玄関に行きドアを開けてみるが、やはり誰もいなかった。
そして、3度目にまた玄関のチャイムが鳴ったのだ。

私は、また玄関に行きドアを開けてみた。
すると、そこには走り去るタカシの後ろ姿が私の目に映った。

タカシは私の家のチャイムをピンポンダッシュして逃げていたのだ。

「タカシっ!!」

私は、思わずそう叫んでしまった。
タカシはその声に反応したのかこちらを向いて舌を出して逃げて行った。

その姿はまるで近所の子供の様だった。
私は直樹のいる部屋に戻るとため息をついた。

「タカシか？」

直樹がそう言ってくる。
タカシと直樹は面識があったのだ。