第9章 逢瀬
部屋に入ると少しだけ暖かさを感じた。
季節は確か寒かったと思うが、私の記憶は曖昧だった。
「何か飲むだろう?」
「うん、でも、私、車だからアルコールは無理よ…」
「そんなこと言うなよ…今夜は泊って行けばいいじゃねぇか?」
それは、出来ないと思った。
留守にしている家には犬のマルと猫のルルとララが待っている。
「それは、できないわ。動物たちが待ってるから…」
「なら、仕方ねぇな…」
そう言うと、前回と同じように缶コーヒーを手渡してくれた。
私は缶コーヒーの蓋を開け飲みながら窓際に置いてあるソファーに腰かけた。
「俺、これからシャワー浴びるからそこで待ってろよ…」
「ええ、わかったわ…」
タカシは私の言葉を聞くとバスルームに入って行きシャワーを思い切り出して浴びている様だった。
私は、缶コーヒーを飲みながら、窓の外に見える246を走行する車を眺めていた。
246沿いにある街並みの灯りをぼんやりと眺めていた。
その街並みの灯りはとても綺麗に見えた。
まだ、バスルームからはシャワーが流れる音がしている。
タカシのシャワーはとても長く感じた。
暫くすると、そのシャワーの水の音が途切れた。
バスルームからタカシが腰にバスタオルだけを巻いて出てきた。
ひょろりと背が高いだけかと思っていたが、こうしてマジマジとタカシの身体を見るとそれとなく筋肉が付いていて腹筋も僅かだが、割れているようにも見えた。