第9章 逢瀬
唯一の連絡方法は、携帯で話すしかなかった。
この日も、ある意味賭けの様な感じで私はタカシのマンションに行ったのだった。
エレベーターに乗り3階で降りた。
そして、301号室のインターホンを鳴らす。
だが、中からは物音ひとつしておらず、人の気配も感じることができなかった。
私は諦めて1階のエントランスまで降りてエントランスのところでタカシが帰って来るのを待っていた。
暫くすると、原チャリスクーターのエンジン音が聞こえてきた。
タカシが帰って来たのだった。
私は自分の時計を見てみた。
すると、時刻は夜中の12時半を少し回っているところを指していた。
タカシはエントランスにいる私を見ると驚いた様だった。
「なんだよ…来てるなら電話してくれたら良かったのに…」
ちょっと嬉しそうに笑いながらそう言ってくる。
私は、基本、電話で話すのが苦手だった。
なので、連絡はいつも携帯のLINEにしていたのだ。
その、LINEを読もうともしなかった。
タカシは今夜もかなり酔っぱらっていた。
酔っぱらっていると正常ではなくなるのだ。
それは、セックスにも表れていた。
タカシは私の肩を抱き、身体を抱きしめる様にしてエレベーターに乗った。
3階で降りて301号室の鍵を開けた。
「さ、入れよ…」
「うん、ありがとう…」