第3章 翌朝
「昨日の夜、この家に入った時、玄関上がって引き戸開けたら柵があって入れなかったんだぜ」
そうなのだ。
私の家には1頭の犬に2匹の猫がいる。
その犬や猫たちが突然外に飛び出さないように部屋に入るところの引き戸にはゲートが張られていたのだ。
タカシはそのゲートの事を言っているらしかった。
「俺、仕方ないからその柵を一生懸命乗り超えて部屋に入ったんだ…」
「そうだったの?ごめんなさいね…」
「別に、いいけどな…」
タカシはそう言うと少し笑っていた。
私は、そんなことよりも携帯が気になっていた。
「それより、携帯はどうするの?」
「え?携帯か?帰りに昨日の夜、歩いた川沿いの道を探してみる…」
「そう、見つかるといいわね…」
「じゃ、俺、これで帰るわ…」
「えー?帰っちゃうの?」
私は、タカシがこれで帰ってしまうのが惜しくて仕方なかった。
でも、携帯の事があるのだ。
「あぁ、だって携帯探さないといけないからな…」
「そうよねぇ…」
私は、タカシが帰ってしまう事に心底ガッカリしていたのだ。
セックスができると期待していたからかも知れなかった。