第3章 翌朝
タカシは尚もこう話す。
「昨日の夜、俺が、お姉さんの家に来て泊った事は店のママには内緒にしてくれよな…」
「ええ、分かったわ…」
何故か分からないが、タカシは店のママに私との関係を知られたくない様だった。
タカシはまたゲートが張られている引き戸に来るとまた迷っているらしかった。
私は、ゲートを開け引き戸を引いて玄関へとタカシを案内した。
私の家の玄関はちょっと広かった。
玄関を入ると直ぐに畳み1畳分の広さがあるタタキがある。
そのタタキに腰かけながらタカシは靴を履いていた。
その後ろ姿を、私はちょっとうらめしそうに見ていた。
「じゃ、俺、帰るから。またな…」
そう言うとタカシは玄関のドアを開けて出て行った。
玄関のドアはパタリと音がして閉まった。
私は、タカシが帰ってしまうと気が抜けてしまった。
もし、携帯の存在に気づいていなければ、あのままセックスまで行っていたかも知れなかった。
それを、思うとちょっと悔しく感じてしまうのだった。
私は、部屋に戻ると眼鏡を探した。
すると、眼鏡はベッドの脇の隙間から片方のレンズが外れた状態で見つかったのだ。
私は、その眼鏡のフレームとレンズを拾って、レンズをフレームに挟み込んだ。
レンズはフレームにカチっと音がしてピタリとハマった。
今度、いつタカシと会えるのだろう。
そんな事を私はあの時考えていたのだ。