第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】

交流会という場で、しかも屋外で初めて身体を貫いた時のの苦痛に歪んだ表情。
悲鳴を抑えるために血が滲むほどに噛みしめていた唇。
今までは思い出すたびにぼんやりとした愉悦感に打ち震えた。
だか、今ではもうそんな気持ちすら遠い。
自分から招いた行為であるにも関わらず、つい先程までをいたぶることを正当化していた自分自身が信じられなかった。

過去の自分を、抹消してやりたいとさえ思う。
それでも、そんなことをしても何の解決にもならないことはわかっている。
逃げることもできない現実は、自分自身が招いた結果だ。
それなのに、打ちのめされそうになっている自分の身勝手さに、反吐がでる。

もしかしたら、もう口もきいてくれないかもしれない。
それどころか、目も合わせてくれないかもしれない。
それだけのことをしてきた。
はきっと五条を嫌悪し、恐れ、膨れ上がる憎悪を抱いたまま殺したいと思っているだろう。

それでも、会いたい。
顔が見たい。
今すぐに彼女を触れることができないのが、つらい。
短い髪を隠して、俯きながら歩いているだろうを抱きしめたい。

自分勝手な我儘であることはわかっている。
それを彼女が望んでいないということも。

今でもまだ、泣いてんじゃねえか。
あの綺麗な漆黒の瞳から涙を零しているんじゃねえか。
あんな風に、泣かせていいやつでははなかったのに。

「ッ……」

いつもの呼び方はせず、彼女の名前を呼んだ。
謝る謝らないの問題ではない。
ただひたすら、彼女に会いたいという想いが湯水のように溢れ出す。
五条は拳を強く握り締め、担任である夜蛾の声も無視し、がむしゃらに高専を飛び出し走り出す。
後悔という身体に圧し掛かる錘を、振り切るように。