第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】
「五条」
身勝手な自己嫌悪に陥る五条に、家入は声を荒げることもしなかった。
「自己嫌悪に陥るのは勝手だけど、一番の被害者は誰だ。髪の毛を燃やされたじゃないのか」
正論だ。
「まだ遠くには行っていないんじゃないか。追いかけろ」
思わず顔を上げると、普段はアンニュイで気怠げな表情をしている家入が、珍しく眉間な皺を寄せ怒りに満ちた険しい顔で五条を静かに見下ろしていた。
「追いかけて誠心誠意の謝罪をするまで帰ってくんな」
五条は椅子から立ち上がると、駆けだすように部屋を出た。
迷ってる暇など、なかった。
廊下を走っていると、後輩たちとすれ違った。
彼らは驚くことなく五条を送り出した。
「頑張ってきてください」
そう声をかけたのは灰原だった。
隣にいた七海も鋭い視線を向けてはいたが、どこかその雰囲気は優しい。
本当に、彼らは全てをお見通しだったのだろう。
五条がが気になるあまり、子供のように辛辣な態度を取り続けきたことに。
だから今まで、何も言ってこなかったのだ。
知らなかったのは、五条だけだった。
顔から火がでるほどの羞恥に見舞われるが、今すべきことは、何よりも傷つけてしまったを追いかけることだ。
話をしたい、声を聞きたいと思うこと自体が独りよがりなことだというのは痛いほど理解している。
は五条の顔すら見たくないだろう。
理不尽なまでの命令や強要等を強いてきた罪は、重い。