第30章 【ヒロアカ】Who killed Cock Robin【4】
運がよかった、と言ってしまえばそれまでだ。
本当に運がよかっただけだ。
だからこそ、突きつけられる。
"現実"を―――。
『動けなかったね、かっちゃんが助けを求める顔をしてたのに』
「…………」
『"個性"のない"無個性"の君が、いくらヒーローになりたいと言っていても、"誰か助けに来てくれるから"って一瞬でも思ったろう』
「………………そ、んなことッ」
『結局、君も他の野次馬と変わらないんだ。助けてもらうことが当たり前だと思ってる、他力本願で無責任で身勝手な人間なんだよ』
緑谷を諭す"それ"の声は、どこまでも静かで真っすぐで緑谷の弱く柔らかい部分を刺激する。
泣いている子供をあやすように、"それ"の手が緑谷の頭に触れ、心地のいい澄んだ声で囁いた。
『"デクの坊"の出久。"無個性"の出久。かわいそうな出久。君はヒーローになんて、なれないよ』
蹲って嗚咽を零す緑谷を"それ"は覆いかぶさるように優しく抱きしめた。