第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】
口を開くたびに重たい鉛のようなものが腹の底に沈む。
五条は今にも崩れ落ちそうになる体をなんとか支え、彼らに目をやった。
責めるような視線。
先程までは逃げるように遮ってしまったが、今はそんなことをするわけにはいかない。
涙を流し、燃やされた髪を隠すために襟を立てて、今頃街ゆくみんなの視線に晒されているであろうを思う。
は周りに気をつかう。
未熟であるためたくさんの人に助けられ、そのたびに謝って、強くあろうと頑張り、誰かが傷つくのを嫌う心の優しい人間だということは知っている。
今回もきっと、ことを荒立てぬために配慮をしたのだろう。
だから誰にも声をかけずひっそりと帰った。
そんな態度が気にくわなくて、点数稼ぎだの弱虫だのと本人に向かって嘲笑したことがある。
それでも、は何も言い返さなかった。
一体、どちらが子供だというのか。
どんな気持ちで、何も言わずに去っていったのだろう。
ぎり、と、胸が押し潰されそうに軋んだ。
「目障りだって、思って」
絞り出すように吐き出せば、起こしてしまった事実がよりいっそう体にのし掛かってきた。
気づいていなかったなんて言い訳にもならない。
「オマエってやつ……」
傑の呆れ声に、返す言葉もない。
どうしようもないほど好きな女性に、酷い言葉を浴びせ、犯し続け苦しめたあげく、挙句の果てには目障りという見も蓋もない理由で髪を燃やしてしまった。
髪をほどいて出かけるくらいなのだ。
大事にしていたはずなのに。
後悔してもしきれない。
なんということを、してしまったのか。