第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】
五条は乱暴にその白い髪の毛を掻いた。
その仕草にはびくりと肩を跳ねさせ、ハッと顔を上げる。
五条の機嫌が悪い時の癖だと理解しているから、条件反射で反応してしまう。
これ以上機嫌を損ねてはいけない、と。
「俺はオマエの交友関係とかどーでもいいんだけど。オマエと無駄話するためにここにいるわけじゃねえし。つうか、ここは稽古場でおしゃべりする場じゃねえの、わかる?」
湧き上がる黒い感情に抵抗できないまま、口が勝手に開く。
自分でも驚くほど冷たい声だった。
は、虚を突かれたのか一瞬目を大きく見開いたが、すぐに頬を赤らめた。
そんなんじゃ……と呟いた言葉は足元の畳に落ちる。
いい気味だと鼻で笑ってやった。
俺を避けて男と会っていた報いだ、と言わんばかりに。
今オマエがこうして呪術師として生きているのは、弱いオマエが今の今まで生きていられるのは誰のおかげだよ。
術式も体術も、使い物になるまで稽古してやったのは誰だと思ってる。
テメエの目の間にいる男だろうが。
もっと俺の言葉に振り回されればいいのに。
振り回されて疲れ果てて、そんで地べたに座り込んで、俺に縋ればいいのに。
「始めんぞ」
殊更冷たくそう言えば、また肩がびくりと震えた。
時計がないこの部屋では畳と足裏の擦れる音しか聞こえない。
実際の時間は数秒しか経っていないだろう。
だが、体感時間では数時間と感じられた。