第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】
「五条さん」
教室の扉を閉める直前、耳に届いた非難の声に振り返る。
こちらを苦虫を嚙み潰したような顔で見つめるのは、五条に一つ下の後輩、金色の髪で長身の男―――七海だった。
七海だけじゃない。
他の人間も、五条に向ける視線はどこか冷たい。
こんなにもアイツは可愛がられている。
その事実が更に五条の苛立ちに拍車をかけた。
「あまり、さんをいじめないほうがいいですよ」
いじめ。
その言葉に乾いた笑みがこぼれた。
いじめているつもりなんて毛頭ない。
稽古してもらいたいと言ってきたのはあっちだ。
強い奴が弱い奴を指導しているだけだ。
それ以上も以下もないし、ましていじめているって捉えられているのは心外だ。
それに俺に例え俺にいじめられて傷付いたとしても、俺以外の人間に慰めてもらうことができんだろ。
アイツはいろんな奴に好かれてるみたいだし。
俺一人に嫌われたところでなんの支障もないはずだ。
本気でそう思っている五条は七海の言葉を気にも留めずに、同級生や後輩の責めるような視線を無視し扉を閉めた。
その瞬間には、彼らの忠告などさっぱり忘れて。
後に、このことを思い切り後悔することになるとは、露も知らずに。