第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】
「おや、じゃないか」
お団子頭がトレードマークの同級生―――傑は、少しだけ驚いた様な声を出した。
同じ任務に当てられたために車内には傑も乗っていた。
「こっちに来ていたんだね。しかも―――男連れ?」
傑が気が付く前にその姿には気が付いていた。
あいつの姿は流れる風景と共に既に遠ざかり見えなくなった。
たった一瞬。
それでもこの瞳で捉えることができたのは六眼とかではない。
横断歩道の一番前で信号が変わるのを待っていたから気が付いたのかもしれない。
その証拠に傑も見ていたから。
あいつは仲睦まじげに誰かと話をしていた。
一瞬ではあったが、あれはきっと男だ。
しかも小さい袋を大事そうに抱えていた。
弟―――という線も考えたが、あの表情を見ればその線は薄い。
「悟、見たかい?」
「ああ」
傑の問いに、俺はできるだけ平然と返した。
だけど内心は酷く動揺しざわついている。
「東京にくんなら普通こっちに連絡こねえ?」
自然と言葉を出すことができたのは奇跡に近いかもしれない。
胸の内はこんなに動揺して心臓が波打ってんのに、不思議だ。
頭の中にこびりつくあいつのはにかむ顔と抱えた袋、そして―――男の存在。
「任務か交流会以外では連絡しないだろう。ましてプライベートなら尚更」
正論って俺嫌いなんだよね。
なんだよ、その「当たり前だろ」みたいな顔は。
ぶん殴るぞ。
「それにしても普段と違ってお洒落をしていたね。私は髪の毛を結んでいる方が好きだが、おろしていてもいいな」
「あんな芋臭いのが好きなのか。きっも。似合ってねえじゃん」
「……ふっ」
鼻で笑われた。
なんだよ、コイツ。
まじでぶん殴りてえ。