第27章 【石神千空】Love is blind.
の腰に腕を回し、引き寄せるように彼女の身体を支える。
フラフラとおぼつかない足取りのは今にも倒れそうで、平均男性よりも遥かに筋力も体力もない千空は、彼女と一緒にふらつきながらなんとか自分の家に辿りつくことができた。
ゲンや羽京には「の家に送り届ける」と言ったが、そんなつもりは毛頭ない。
例え、彼女の酔いが冷め住所を聞き出せたとしてもうまい具合に言いくるめればいい、そう考えていた。
しかし、結果的には酔っぱらったままだったわけだから、千空にとっては好都合だった。
一人暮らしにしては随分と立派な一軒家の玄関を開け、千空は迷うことなく寝室に向かって歩く。
気持ちよさそうに寝ている彼女を起こさないように優しく丁寧にベッドの上に寝かせた。
「ん~……」
「…………」
寝返りを打つ彼女の寝顔を暫くまじまじと見つめ、床に投げ出された彼女のカバンを拾い上げる。
その時、カバンから彼女のスマホが滑り落ちた。
静かな部屋に響く大きな音でが起きないかと心配したが、その気配は微塵もなく千空はほっと胸を撫でおろした。
床に落ちたスマホを拾い上げると、画面が勝手に明るくなりロック画面が表示された。
「非通知着信74件……」
ロック画面に通知された非通知の件数。
最後に着信があったのは1時間前だ。
1時間前と言えば、千空たちが居酒屋を出る頃。
その時には何度もこのスマホに着信があったということになる。
非通知の電話なんてそうそうかかってくるものではない。
なのに、この異常な件数。
「…………」
考えうる一つの可能性。
千空はそっと彼女の近くにスマホを置くと、静かに寝室を後にしリビングへと向かった。