第27章 【石神千空】Love is blind.
「ほらよ」
「これは?」
「防犯ブザー」
手渡された防犯ブザーはネコの形をしたかわいいものだった。
まさか千空がこんなかわいい物を作っているとは思っていなかったは声を出して笑った。
「防犯ブザーなんてどこでも買えるのに、わざわざ作ったの!?」
「悪ぃかよ」
「全然!!」
「まぁ、気休めだがな」
そう言う千空だったが、その優しさが嬉しかった。
と同時に疑問だった。
昨日知り合ったばかりなのに、なぜここまで優しくしてくれるのか。
「あ゙?そんなの……」
歯切れの悪い物言い。
その後に続く言葉を待ってみても、「理由なんかねえよ」と誤魔化されるだけで教えてはくれなかった。
「てめー、この後の予定は何もねえつったよな」
「え、うん……」
「防犯ブザー作ってやったんだ。見返りとして手伝え」
千空は口角をあげて悪魔のような笑みを浮かべた。
まずい、と思ったが時すでに遅し。
は千空の研究の手伝いを強制的にさせられることとなった。
「ゲンくんもこんな感じで巻き込まれたのか~。納得」
「あ゙?巻き込んじゃいねえよ。あっちが勝手に巻き込まれただけだ」
「………人はそれを巻き込まれたって言うんじゃないかな」
昨日の失態や朝ごはんと着替えの提供、そして防犯ブザーのお礼ということで簡単な作業だけ手伝うことにしただったが、暫くして気が付く。
体のいい雑用を押しつけられているだけではないのか、と。
しかし文句など言えず、はただただ目の前の作業に集中した。