第27章 【石神千空】Love is blind.
ゼミが終わると、学生たちは予約していたお店へと来ていた。
飲み始めてから2時間は経とうとしている。
生徒の半数は出来上がりはじめ、ちらほらと帰る人もうかがえた。
残っている学生はまだ飲んでいるようで、一人の女子がお酒の入ったグラスを手にゲンの元へとやって来た。
「ねぇ、ゲンくん。千空くんはいつ来るの?」
少し舌足らずな口調で女子の一人がそう尋ねる。
お酒で赤くなった顔はどこか色気のあるように見えるが、ゲンは彼女のその誘うような仕草を気づかない振りをして「もしかしたら実験に夢中になってるかもね~」とだけ返した。
その様子を入り口付近の席で見ていたは、一人枝豆を食べながら聞いていた。
トイレに行っている間に先ほどまで一緒に飲んでいたはずのゲンと羽京は、華やかな女子たち、いわゆる一軍女子たちに連れ出されてしまったらしい。
気づいたら一人だった。
枝豆を食べながら離れた場所で盛り上がる同期をみる構図に、段々と虚しさを覚えはそろそろ帰ろうかと思い、カバンを手に取った時だった。
「帰んのか?」
聞きなれない声には顔をあげた。
そこには、昼間に会った石神千空の姿があった。
少しだけ息が上がっているようで、額には汗が滲んでいるように見える。
は驚きのあまり声を出すことができず、ただ彼を見つめる事しかできなかった。