第27章 【石神千空】Love is blind.
「今日のゼミの飲み会なんだけど………ってちゃん忘れてたでしょ、その顔は」
ゲンのその一言にははっとし大きくテーブルに突っ伏しカバンから財布を取り出すと中身を確認し始める。
一応お金はあるものの、少し面倒臭さを感じてしまう。
お酒が得意ではない上に飲み会の雰囲気がどうも苦手で仕方がない。
そんなところに行って決して安くない金額を払うことに憂鬱さを抱き、どう断ろうかなと思案しているとゲンは「俺の友達も参加していい?」と聞いてきた。
「友達?あー。もしかして彼のこと?」
「羽京くん知ってる人?」
「有名だからね。も知ってると思うよ」
ゲンの友達で有名な人。
考えても思いつかない。
誰なのか尋ねようとした時だった。
「ゲン」
低い声が彼らの耳に届いた。
声のする方へ目を向けると、そこには白衣を身に纏った一人の男がどこか疲れた表情で3人を見つめていた。
「千空ちゃん」
千空。
その名前には聞き覚えがあった。
ポクポクポクチーン……と頭の中で音が鳴りは「石神千空くん?」と気が付いたら声に出していた。
「俺のこと知っているなんておありがてえな」
知らない人はほとんどいないだろう。
石神百夜宇宙飛行士の一人息子である彼は入学して以来有名だった。
しかし彼を有名にさせたのは、彼の奇行にあった。
研究室を爆発させたことは一度や二度ではなく、大学の裏山では度々ロケットを打ち上げる実験を行い失敗しては楽しそうに笑っていたり、今はどうやらNASAと協力してタイムマシンを作る事に躍起になっているとかいないとか。
とにかくそう言った噂が耐えず、彼が石神百夜宇宙飛行士の息子という事実が霞んでしまっている。