第27章 【石神千空】Love is blind.
講義が終わり、帰りの支度をしていたは自分のスマホが震えていることに気がついた。
ディスプレイには"非通知"という文字。
ぞくりと背中に鳥肌が立つのが分かった。
マナーモードにしているそれは講義机の上で羽虫のように音を立てて鳴り続ける。
しばらくすればぴたりと動きを止めて静かになるが、耳の奥でまだ鳴り響いている気がする。
はごくりと唾を飲み込み、静かに息を吐くとスマホを手に取った。
1か月ほど前から、監視されているのではないかと思うほど講義が終わるたびにスマホが鳴る。
それは家に帰ってからも続き、毎日100は超えるほど。
最初こそは布団に潜って震えていた夜を過ごしていたが、ここ最近は放置をしやり過ごしている。
誰かに尾行されている様子も実害もない。
それだけは唯一の救いだった。
大きなため息を吐いてはお昼を食べるために教室を後にしようとした時、後ろから声を掛けられた。
振り向くとそこには同じゼミに所属しているあさぎりゲンと西園寺羽京がいた。
「大きなため息吐いてどうしたの?」
「何か困りごと?」
「ちょっと疲れてただけだよ、大丈夫」
二人に心配をかけまいと笑顔で返すに彼らもまたこれ以上は詮索できないと判断したのか何も言ってくることはなかった。
カフェテリアは学生で賑わってはいたが、席に余裕はあり日当たりのいい窓際で3人は昼食を取ることにした。
他愛のない話をしながらこの後の事を話していると、ふと何かを思い出したようにゲンが「そうだ」と切り出した。