第26章 【呪術廻戦】DOOR【3】
「当時は、酷いものだったね。感染者に対して心ない言葉たちが飛び交って。感染者は何も悪くないと言うのに」
「それほどまでに感染力の高いウィルスだったのでしょう。仕方ありません。人間という生き物は未知のものと遭遇した時、視野が狭くなりますから」
「ワクチンが出来上がったのはそれから2年後のことだったけれど、中には"対処が遅い"という声も少なからずあった。病を治すための薬なんてものは、どこにもないとその時初めて知ったね」
「……それは科学も同じです」
ぽつりと、五条は小さく呟いた。
先ほどまでの自身に満ち溢れた男と同一人物とは思えないほど、どこか弱弱しかった。
科学が日々進歩していた科学者が今の現状を知ったらどう思うのか。
五条はそう思った。
なぜならあの頃は科学者であれば誰しもが「瞬間物質転移装置」や「タイムマシン」が本気で作れるとそう信じていた。
しかし蓋を開けてみればどうだ。
そんな夢から覚めたような現在は、未だにそんなものは存在しない。
科学の発展が終わってからもう50年以上も経ってしまった。
世間では誰も科学者などとは呼ばない。
そんな肩書はもはや存在していない。