第26章 【呪術廻戦】DOOR【3】
「失礼。お気を悪く……」
「そういうあなたはどうなんですか?」
硝子の言葉を遮り、五条はぎらついた瞳を彼女に向けた。
「医学に進歩はありますか」
「医学は常に進歩しているよ」
「それは病の進歩に伴ってということだろ」
口調の荒くなり五条の言葉に、硝子は何も返せない。
何故なら五条の言う通りだからだ。
医学は病の進歩に追い付いていない。
硝子は言った。
今から50年も前に馬鹿げた話があったと。
1990年。
日本で初めてエイズが発見された年、無責任な医師は皆口を揃えて「2000年には特効薬発見されている」と言ったそうだ。
「予言でもなんでもない。ただの他人まかせにすぎない」
「それからもう50年以上も経ってしまった……」
「ああ。まぁ、当時の不治の病なんてもんはエイズくらいだったんだろう。彼らが今の現状を知ったら腰を抜かすだろうね」
2009年の時点で、神経、消化器、血液、呼吸器など全ての器官を合わせれば約130疾患もの指定難病が厚生労働省で疾患として指定されている。
つまり、未だに難病を治すための薬などは開発されておらず、今もその病気で苦しんでいる人がいるということだ。
2019年。
この年は世界を脅かした新型コロナウィルスが流行した。
空気感染や飛沫感染をするため、人々は外出の際は必ずマスクをし手洗いうがいを徹底的に行った。