• テキストサイズ

【雑多】be there【短編集】

第26章 【呪術廻戦】DOOR【3】







「私も20世紀後半の文献を読みました」
「しかし、当たり前の様に月日は流れ、そして2000年を迎えた。この時から、偉大な予言者と崇められた彼の名前は人々の記憶から消されていったんです」
「なるほど。しかし……いや、科学者であるあなたにこんなことを聞くのはおかしいが……」
「なんです?」

言い淀む硝子に、五条は目で訴えた。
言いたいことがあるのならばはっきり言え、と。
硝子は、小さく視線を外しながらも軽く息を吐いた。

「科学の発展はあまりにもおろかな結末を辿った」

ゆっくりとソファから立ち上がる硝子は、本棚の前まで行くと一冊の本を手にした。

「20世紀後半、科学は無茶と言えるほどの過度の発展、そして犠牲を伴い、エコロジーなんて言葉が生まれた」
「……よくそんな50年も前の言葉をご存じだ」
「しかしその言葉は遅すぎた。まぁ、当時の人間もわかってはいたんだろう。しかし人々の自意識のようなもので同調できなかった」
「まったく、よくご存じだ」
「……文献を読んだんだよ」

手にしていた本を読む硝子に、若干の苛立ちを覚えながらも五条は組んでいた足を崩し、両膝に両肘を乗せ前かがみになった。

「それで。家入先生は何が言いたいんです?」
「……先生はやめよう。お互いに。……今日あなたにお会いしたのは、実はこのことが聞きたかったんです」

読んでいた本をパタンと閉じ、元の場所に戻した硝子はゆっくりとソファに座る五条へと身体を向けた。
ぶつかる視線と視線。
自分の言葉を待っている五条に、硝子は静かに口を開いた。

「科学に、進歩はありますか」

思ってもいなかったその言葉に、五条は思わず立ち上がった。
その表情は侮辱されたことに対しての怒りや、困惑などの色が伺えた。



/ 564ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp