第3章 【爆豪勝己】盲目をつきやぶれ
いい夢を見た、と思いながら目を開けた。
窓の外はもう真っ暗、時計を確認すると夜も更けていた。
机に頭を預けて伸びていたバクゴーは、私が毛布を手繰り寄せる音に耳ざとく反応して勢いよく体を起こした。
まさか私が寝返りを打つ度こうして振り返ってくれていたんじゃないだろうな。
「おい!」
自棄を起こした声量でバクゴーは叫び、さすがに大声すぎる、と自分でも気付いたのか軽く舌打ちをした。
私が驚いて瞬きをすると、バクゴーは私を睨み付け、立ち上がり、ベッドの側に寄ってきた。
「覚えてるか、赤の膝掛け」
あまりに早口で低い声だったので、呪詛か何かかと思った。
今その話をするのか?
私は記憶を引っ張り起こして、確かにストールを取り出そうとして倒れたが現物はまだ机の中だよな、と脳内で確認する。
そうだ間違いない。
あのストールの所在を今のバクゴーが知るわけがない。
「こないだ窓口に確認しに行ったんだ。まだ残っとるかなって思って」
雲行きが怪しくなってきた。
大変だ。
私が言い訳を思いつくより、バクゴーが言葉を続ける方が早かった。
「そんで教えてもらった。あんたが取りに来たんだって?」
……バレている!
何も違ってはいなかったがとりあえず、違うんだ、と叫びそうになって気が付いた。
バクゴーの目は平素よりも部屋の明かりを反射していた。きらきらして、潤んでいて、今瞬きしたら涙が零れてしまうのではないかと思った。
何かがおかしかった。
私はバクゴーの開き切った瞳孔を覗き込んだ。
彼は不自然なスピードで目を背け、かすかな声で呟いた。