第3章 【爆豪勝己】盲目をつきやぶれ
あとは断られるのを待つばかりだったので、もう随分と気楽だった。
目を見開いて硬直しているバクゴーを、きれいだな、と思って眺めていた。
バクゴーは私に押さえつけられていない方の人差し指を自分の鼻先に向けた。
「俺?」
私は頷いた。
「結婚?」
私は頷いた。
バクゴーの背が驚愕に震えるのを、かわいいな、と思いながら見ていた。
そう、こいつは可愛いし綺麗だし格好いいしでとにかく卑怯なのだ。
この子どもを好きにならない大人が一体どこにいる。
だから私がこうして告白して振られてしまうのも仕方のないことなのだ。
バクゴーの口が薄く開く。
そっと突き出される唇。
彼は長いこと無言を保っていたが、引き伸ばされる判決の時を、私は至福に感じていた。
バクゴーの反応は私が予想したどれとも異なっていた。
「……するか?」
聞き間違いかと思った。
頼りない声で、耳を真っ赤にして、バクゴーは言った。
「熱がある」
私は宣言した。
バクゴーは頷いた。
バクゴーの手を離し、持っていた薬を口に放り込んで、コップを受け取って水を飲んだ。
横になる。
そうだ熱があるんだ、幻聴だって聞こえるだろう。
「寝る」
バクゴーは頷いた。
私は寝た。