第25章 【虎杖悠仁】ときめき
「ありがとう。いくら?」
「いらないよ。餞別」
にこっと笑う友人二人にも笑う。
本当は誰にも見送りに来ては欲しくなかったけど、ずっと一緒にいた美々子と菜々子だけには日程を教えた。
自分の夢を美々子に話さなかったことを美々子は怒ってはいたが、依存してしまう癖のある彼女には言えなかった事を伝えば拗ねはしたが納得はしたようで。
旅立つその日まで美々子もまた彼女の背中を押し続けた。
「なんかほしくなったらラインでもしてよ。送るから」
「うん」
「本当はさみんな見送り来たがってたみたいだよ」
「知ってる。でも、会ったら決意鈍りそうだし」
「……虎杖とは、ちゃんとお別れできたの?」
美々子の言葉に、の動きが少し止まった。
それはできていないことを示唆していた。
何か言いたそうにする菜々子を美々子が止める。
「それでいいんだね」
「うん……」
「の気持ちもわかるけど、残された方の気持ちも考えてね」
「……時間が経てば忘れることもあるし。離れる私なんかよりももっと素敵な人、いるだろうし」
「言わなくてもいい事も……あるしね」
「菜々子ぉ、私泣きそうだ……。早めに搭乗口行こうかな」
「もう少しお話しようよ。時間あるんでしょ」
美々子がの隣に座る。
菜々子がトイレだと言い、彼女から少し離れた場所へと移動し電話を掛ける。
「イエローよりホワイト、イエローよりホワイト!!」
「はい、こちらホワイト~」
「ちょっと何してんの⁉もうすぐ搭乗口入っちゃうんだけど!!」
「待て待て。もうすぐ着くから、引き留めておけ。どうぞ」
「引き留めてるわよ‼だから急げっつってんの!!」
「はいはい、了解了解~。どうぞ~」
「その口調腹立つ!!」
乱暴に電話を切って、菜々子はの元へ戻った。
他愛の話をしてなんとか虎杖が来るまでの時間を稼いでいた。