第25章 【虎杖悠仁】ときめき
「あいつ、日にち決まったら教えるって言ってたのに……」
「つらいだろうね、この彼女も。一人でさ、見知らぬ土地で頑張るなんて並大抵の勇気じゃないと思うよな。励ましとか、心の支えとか、与えてやりたいってそう思うよな。男だったらさぁ、こういう時しっかり決めてやらないとな。お客さんも、そう思うだろ?」
サングラスの奥の瞳が自分を映している。
ぐっと拳を握りしめて、今自分んできる事をしてあげなければ。
後悔なんて、したくないから。
だけど、今さら彼女に何を言えばいい。
その時、五条のスマホが音を立てて鳴った。
「はいはい~。あ~、うん。ほい」
「え?」
五条はスマホを虎杖に渡した。
自分宛てに誰かが電話をしてきたようだ。
スマホを耳に当てると。
「あ、虎杖ぃ~?私だけど、私もパンダ先輩もお腹治ったわ」
「私が調合した薬飲ませたら一瞬だったわ」
「だからよぉ、そう言うわけでお医者さん呼んでこなくていいからな悠仁」
「行きたい場所あんなら行けば?じゃあね」
釘崎、家入、パンダ、真希は電話越しに虎杖にそう伝えると、一方的に電話を切った。
ツーツーと鳴り響く音が耳に届いて、いや、そんなことはどうでもよくて。
「どうすんの、悠仁。励まし与えてやんの?それともこのまま放っておくのか?」
「あの……五条先輩」
「ん~」
「行き先、変えてください」
「いいけど、どこに?」
「決まってる!!」
「そうだよな!!ホワイトより前髪、ホワイトより前髪、作戦その3成功!!どうぞ!!」
「ホワイト?前髪?」
「気にすんな。この方が盛り上がるだろ。行くぜ!!いざ羽田空港に!!」
五条は白い歯を見せて笑い、アクセルを思い切り踏んだ。