第25章 【虎杖悠仁】ときめき
「お客さん、ラジオつけてもいい?」
「え、うん……」
「おもしろいラジオやっててね」
そう言って五条はモニタータイプのカーオーディオを操作する。
聴こえてくる音楽と共にラジオパーソナリティらしき人物の声も聞こえてくる。
放送室からどうやってこの車にラジオが流れて来るのかという疑問はここでは御法度である。
『さぁ今週もやってまいりました、DJセブンの今夜も教えナイトの時間です。早速ではあるけど、一つ目のお便りを読んでいこう!!』
どこかで聞き覚えのある声に虎杖は眉を寄せた。
が、気にすることなくラジオに耳を傾ける。
『ラジオネーム"赤いバラのネックレス"さんからのお便りです。【私今日ウィーンに旅立ちます。自分の夢を実現させるために】』
「ごめん、五条先輩。ラジオの音上げて」
「いいよ」
『【だけど思い残したことがあります。私の誕生日を祝ってくれたタイガーくんの事です。彼とは友達以上恋人未満(古いかな)の付き合いでした。私は彼の事が好きで、たぶん彼も私に好意を抱いてくれていたと思います。でも離れ離れになってしまう私たちは結局友達のままでいようと言うことになりました。今日の飛行機で私はウィーンへと旅立ちます―――やばい!!夜蛾先生に見つかった!!逃げよう!!―――高菜!!そんな私からのお願いです!!思い続けた彼にこの曲を贈ります!!―――もう限界だって、何してんの⁉殴られるよ‼―――おかか、おかか!!それではさんから、あ、本名言っちゃった。"赤いバラのネックレス"さんからのリクエストで、今日のラジオを終わります!!―――七海早く!!わかってる!!】』
ぶつり、とラジオは切れた。
リクエスト曲なんてものは流れてこない車内の中。
肩を震わせて笑っている五条とは裏腹に、虎杖の目は大きく見開かれていた。
一通り笑い終わった後、五条はバックミラー越しに虎杖を見る。