第3章 【爆豪勝己】盲目をつきやぶれ
私はコップを彼の手ごと受け取って、彼の手を自分の手でくるんだ。
もう一度君に触れる事が出来た。
バクゴーは不審を顕にして、繋がった二人の手と私の顔を見比べた。
私は息継ぎをする。
最初の一文字目をしっかり告げてしまえば声は心と直結する。
「君が」
赤色の美しい目をまっすぐに見る。
鋭い瞳に自分が映っているのが見えた。
怖くはなかった。
未来はもうわかっていた。
「愛おしい。自分の子どものように」
これからの君の全てを私は祝福できるだろう、何よりも君のことを大切に思っている、自分自身よりも。
それらの意味を込めた言葉はバクゴーに間違って伝わったらしく、彼は思いっきり眉根を寄せた。
「早く結婚して本物の子ども産めばいいだろ」
冷たく言い放たれた。
バクゴーは腕を自分の側に引き寄せて私の手から逃れようとしている。
「できるなら君と結婚したい」
「はあ?」
「君と結婚したい……」
バクゴーの手を逃すまいと私は両手で彼の手を握り直した。
意図せず懇願しているような体勢になったが、バクゴーにいっそ求婚したいと考えている私の気持ちは正しい。
久しぶりに正直になった気がする。
さて私の義務は果たした。