第25章 【虎杖悠仁】ときめき
溢れる感情がぐちゃぐちゃになる。
言葉にならない言葉が、虎杖の胸の中をドロドロにしていく。
今の虎杖にはの言葉を静かに聞くほか、できることがない。
「一人で抱えきれなくなっちゃって、正直に言うとね、相談に乗ってもらおうかなと悩んだりもした。でも、そしたら絶対にぐずぐずになると思ったし、自分のことなんだから、ちゃんと自分で決めなくちゃって」
涙声になるの声に虎杖もまたうっすらと瞳に涙が滲む。
彼女の夢の足枷になっているのは自分だと、バカな虎杖でも十分にわかった。
背中を押してあげなくてはいけない。
彼女の夢を、彼女が長年追い続けてきた夢を、自分も応援しなくては。
「ごめんなさい」
遠距離はだめだった。
会いたいときに会えないし、電話だけなんて寂しい。
テレビ電話があるけど、顔を見たらもっと会いたくなる。
「なんか、いろいろと……」
外国、ウィーンだなんて、すぐに行ける距離でもないし、電話だって電話料金いくらかかるんだ。
俺まだ学生なんだけど。
「……ごめんなさい」
やめろ、行くな。
日本でプロ目指せばいいじゃん。
俺、お前に会えなくなるの嫌なんだけど。
「……っ」
「でもさぁ、例えばさぁ」
何かを言いたくて虎杖は口を開いたけど、それを遮るようには続ける。
まるで虎杖の言葉を聞かないようにするために、わざとそうしているような。
虎杖と視線を合わせることなく。