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【雑多】いつかどこかで【短編集】

第3章 【爆豪勝己】盲目をつきやぶれ






「寝たか?」

静かになった私に気付いてバクゴーがまっすぐ振り返った。
目が合う。

「……寝てない」
「薬が二種類でとる。抗生剤と解熱剤」

そうだった。
そうなのか。
私は上体を起こした。
バクゴーは立ち上がってコップを持ってきてくれる。
手のひらを差し出されて、その上には錠剤がふたつ収まっていた。
薬を受け取る時、私の指はバクゴーの生身の手のひらの上を滑った。
掌の皮が厚くてごつごつしていて、もっと触ってみたいな、と思った。
一刻も早く振られたかった。

「バクゴー」

きちんと玉砕して、断ってもらって、早く君を忘れたかった。
瞼を持ち上げてバクゴーを見ると、いつも通りのバクゴーがいた。
迷惑そうに私を見ていて「んだよ」と愛想のない声をくれた。
死ぬほど情けない姿を見られてしまった自覚があったので、勇気を出す必要はなかった。
情けない私がもう少し情けなくなるだけ。
ただそれだけ。
問題の部分は既にさらけ出してしまっていて、これ以上駄目になってしまっても、何も変わりはないだろう。
どう言えば私の心の中身をそのまま伝えることができるか、火照った頭で真剣に考えた。
私がバクゴーの顔をじっと見ている間にバクゴーは私から目をそらし、手に持っていたコップを「おら飲め」と押し付けてきた。
どうせだし、もう二度と機会はないし。




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