第25章 【虎杖悠仁】ときめき
「虎杖、中学の時彼女いたんだよ。小倉さんって子なんだけど。中学卒業すると同時に別れたの。遠距離だからって理由で。仙台と東京でだよ?もう遠距離は絶対嫌だって、虎杖言ってたもん。私は、外国だし……」
「はぁ~、くっそつまんないね、それ」
「え?」
「私だったら距離関係ないね」
「菜々子とは違うもん」
「ふん、貧乳」
「うるさいギャル」
二人の間に沈黙が生まれた。
こういう風にお互いに言いあうことは珍しくない。
その為空気が悪くなることはないのだが、それでも一方的に責められている気分になるは、この状況に嫌気がさしている。
「二人ともお似合いだと思うけどね。まぁ、せいぜい告白されないように気を付けることだね」
「なにそれ」
「告白される前に彼にウィーンに行くって伝えること。そうじゃないと虎杖のこと、ますます傷つけることになるよ」
菜々子はそう言うと、ソファから立ち上がり部屋へと戻って行った。
一人残されたは手の中にあるネックレスに視線を落とす。
「……わかってるよ、そんなこと」
ぽつりとこぼれた言葉は吸い込まれるように掌の中に消えていった。