第25章 【虎杖悠仁】ときめき
大勢で騒いで遊べば、その流れで口を滑らせることがあるかもしれない。
滑らせることはなくても、出来上がった熱に舞い上がり素直に気持ちを伝えることができるかもしれない。
そう言う賭けのようなものだった。
結局、何も進展しないし何よりが「本当」に伝えなければいけないことを彼女はまだ虎杖に言っていない。
菜々子にとってはそっちの方が大本命に近かった。
「だって……」
「だってじゃないでしょ。……さ、例えば虎杖から告白されたらどうすんの?」
「……………」
「はぁ」
「だって、もっと早くから付き合ってたら違ってたって思うけど、もうずっと私たちこんなんなんだよ?仕方ないじゃない」
まるで自分に言い聞かせるように。
はただ下を向いて俯いている。
尖る唇は一体何に不満を持ち拗ねているのだろうか。
「……恋人と自分の夢、天秤には欠けられないの?いいじゃん、別に。遠距離で」
菜々子の言葉には掌をぎゅっと握る。