第25章 【虎杖悠仁】ときめき
いつもは虎杖と二人きりで遊んでいたが、こうして大勢と楽しむのも悪くない、と同時に。
虎杖と話す時間は圧倒的に少なく、どこか寂しさを感じる。
OKしたのは自分だけれども。今二人きりになるとなぁ……。
どちらが正解だと言えないことに、は頭を悩ませる。
彼女の焦りや不安は日に日に大きく増していく。
「?」
その時、自分を呼ぶ声が聞こえた。
目に映るのは虎杖の姿。
「虎杖、どうしたの?」
「お前こそどうしたんだよ。トイレに行ってたんじゃ……」
「あー、ちょっと休憩」
あはは、と笑えば虎杖も笑った。
そういう虎杖も休憩がてら部屋を出て来たと言う。
なんでも中では、五条と灰原と夏油が悪ノリを始めたらしく、美々子と菜々子がちゃちゃをいれ、伏黒と七海はソファで死んでいるという地獄絵図が完成されているという。
なにそれ、戻りたくない。
という言葉を飲み込んで「へぇ」とだけ答えた。
無言の時間が二人の間に流れる。
聴こえるのは、有線からの流行りの曲と、各部屋から聞こえる歌声。
そして明らかに一層うるさい自分たちの部屋からの笑い声と悲鳴と爆音。
「うるさ……」
「あはは、めっちゃウケる」
あの中に自分もいると言うことを忘れて爆笑する。
その笑みを虎杖は見つめて、そして少し口を結んだ後、パーカーのポケットから小さな箱を取り出した。