第25章 【虎杖悠仁】ときめき
ストライクを出した虎杖にハイタッチをしようとすれば、お互いに一回急ブレーキをかけてからゆっくりとその手を合わせるし、飲み物が入ったグラスを持とうとしたその手と手が触れ合えば、引っ込めて「ご、ごめん」「私も、ごめん……」なんて、どこの少女漫画だよと突っ込みたくなる。
そんなゲロ甘展開を始終見せつけられた真希と家入は既に胸やけを起こしている。
家入に至っては煙草を吸わずにはいられないほどに。
2本目の煙草に火をつけ、肺に煙を送り届ける家入。
その横で眼鏡の汚れを拭きとる真希。
「絶対あいつ、付き合いを意識してよそよそしくなってるよね」
「だと思いますよ。友達でも恋人でもない微妙な期間があって付き合ったカップルみたいな感じですよね」
「言い得て妙」
「しっかりやれよ、」
「なんですか、それ。いいですよ、もう~」
「素直じゃないな、君は」
煙草の火を消して立ち上がる家入。
ぐっと伸びをしてスマホで時間を確認する。
退出時間まであと1時間半もあることを頭に叩き込み、今頃五条が面白くないと暴れているのではと思った家入はカラオケ店の中へ戻って行った。
そして真希も同様に店の中へと戻っていく。
「私トイレ行ってから戻ります」
「早く戻って来いよ。じゃないと私と虎杖でデュエットしてるかもしんねえぞ」
「真希さん!!」
「冗談だよ。あはは」
どこまでが本気でどこまでが冗談かわからないから、心臓に悪い。
はふぅ、息を吐いて受付前のソファに座った。