第3章 【爆豪勝己】盲目をつきやぶれ
私は再び飛び起きた。
醜態を見せた気がする、醜態を見せた気がする!
頭は相変わらずずきずきと痛み、前のめりに抱えて蹲ると、「だからあんたあんまり激しく動くなっつっとんだ」と呆れた声が横からかかった。
見れば私が今最も会いたくない人物が椅子に座って私を振り返っていた。
バクゴーは、「もの食えそうか?」と尋ねてくる。
起き抜けだが空腹は感じていた。
頷くと、彼は立ち上がってテーブルの上にあった深皿を持ってきてくれた。
中身は粥。
「食堂で作ってもらった。冷めてっけど」
銀製のスプーンを握らされて、礼を言うのがやっとだった。
バクゴーは満足そうに笑い「食べ終わったら薬」と言って自分の作業に戻った。
小さなノートに文字を書きつけていく子どもの背中を眺めながら、私はスプーンを口に運んだ。
味覚は麻痺していて、味はほとんど感じなかったが、液体のとろみも舌先で潰せる米のやわらかさも、喉に優しく落ちていった。
体調は最悪だったが気分はよかった。
ものを胃に入れたことで吐き気もどこかへ飛んでいた。
というか、彼の背中を誰にも気付かれることなく眺め倒せるこの時間が、確実に私の精神を癒やしていた。
食べ終わって、皿を脇に寄せて毛布に潜り込み、いつまでも彼を見ていた。
揺れる頭に追随して静かに動く毛先と、剥き出しの両手の触り心地についてずっと考えていた。