第25章 【虎杖悠仁】ときめき
去年の事を思い出し、にやける顔が元に戻らない。
そんな友達の姿をみて、美々子と菜々子は顔を見合わせた。
「たった100円で取れたものに、あんなに喜べるもん?」
「菜々子。金額じゃないんだよ、気持ちなんだよ」
「そういうもん?」
「そういうもん」
顔を両手で隠して足をばたつかせる。
どこからどう見ても虎杖に気があることは明白。
だけど頑なに認めようとせずに、ずるずると今の関係を続けようとするに、二人はどこか煮え切らない様子。
「……」
「美々子」
何かを言いたそうにする美々子の肩を菜々子が掴み、静かに首を横に振った。
彼女に何かを言ってもそれを受け入れないであろうことは薄々気づいている。
眉を下げる美々子の瞳が少し揺れたのを菜々子は見逃さずに、そっと肩を抱いた。
もうすぐ彼女の16歳の誕生日がやってくる。
今年もまた虎杖と二人で出かけるのだろう。
「言うと思う?」
「思わない」
「だよね」
「どうしよう」
「傑兄さんに相談してみる?」
「……もう少し、様子見てからに、しよ」
「うん……」
時間がない、と小さく呟いた美々子の言葉に、菜々子は何も言わずに静かに瞳を閉じた。