第3章 【爆豪勝己】盲目をつきやぶれ
「ほら早くベッド戻れ。ったく何で動くんだよ、無理すんな」
彼は私の腹の下に手を入れて、立ち上がる反動を利用して私をベッドへと投げた。
どさ、と体が落ちて弾む。
床についたままだった私の足は彼の手のひらに持ち上げられて、両方ともベッドに収まった。
ふわりと毛布が降ってくる。
しかし私に休んでいる時間はないのだ。
体を起こす。
「こんな施設は燃やさないと」
「はあ?」
「人体実験しているんだ」
「…………ああ」
腑に落ちた顔をして彼は私の額に手をやった。
なるほど、と小さく呟いて、とん、と私の肩を押した。
抵抗する私に跨がってのしかかり、私は容易く抑えこまれた。
私の背が完全にベッドについてから、彼は私の顔のすぐ横に顔を寄越した。
細い金髪が私の頬をくすぐる。
声は直接私の耳に流し込まれた。
極小音量であるはずの囁きは、随分大きく鼓膜を揺らした。
「俺が全部やっといてやるよ」
それはあまりにも、あまりにも優しい言葉だったので、
「全部ぶっ壊しとく。だから」
騙されたくて私は、
「安心してやすめ」
目を閉じた。
私の腕を縫い止める彼の手から微かに香る甘い匂い。
彼の体臭なのだろうか。
そうだ、バクゴーに、プレゼントしたいものがあったんだ。
受け取ってくれますように。