第3章 【爆豪勝己】盲目をつきやぶれ
事務所に戻り、部屋へ帰ろうとした時、バーニンさんに呼び止められた。
どうやら先日の事件の事を調書したいと警察が来ているらしかった。
私はすぐに行きますと、そう言い、部屋にある予備のヒーロースーツに着替えた。
身体は冷え切っていて身震いするほどだったが、お風呂に入って温まっている時間はないし、事務所の空調は温度を上げることはできない。
かじかむ指で着替えを終え、頭痛と吐き気に気づいたが、私はそのまま部屋を出て所長室へと赴いた。
そうだ。
所長室に行く前にストールを。
ストールを羽織ろう。
そうすれば幾らかマシになるかもしれない。
そう思って、自分のデスクの、一番下の引き出しにしまいっぱなしになっているストールの存在を思い出して、ゆっくりと体をかがめた。
瞬間。
私の視界は急激に揺らぎ始めた。
いや、もしかしたら事務所内が揺れているだけなのかもしれない。
その判断すらも、つかなかった。
「……おいっ」
低い声が何処からか聞こえた。
バクゴーだ。
ああ、ストールを取り出す前でよかった。
あれに包まった状態では気絶することもできなかっただろうから。
私の親切は君に知られるわけにはいかないのだ。
私が君への気持ちに気づいてしまった今では特に。
「どうした!?」
「急に倒れて……すぐに救護室に運ぼう!!」
「おい、しっかりしろ!!」
ショートやデク、バクゴーの声が聞こえたけど。
返事ができずに目を閉じた。