第3章 【爆豪勝己】盲目をつきやぶれ
この私の思考は、どう見ても好きな男を追いかけている少女のそれと完全に相違なかったのではないだろうか。
恋、という言葉がすとんと私の中に落ちてくる。
否定したくてはっきりと声を上げた。
「違う」
しかし、意識すればするほどそれはまごうことなき恋だった。
愛する相手がいつの間にかできていたのだ。
子どもで、学生で、ものすごく年下。
全然駄目じゃないか。
死んでしまいたい。
しかし平日である。
自殺している暇などない。
仕事に、仕事に行かなくては。
ベッドの上で呆然としているじかんが長かったので、朝食は食べることができなかった。
なんとかヒーロースーツを身に纏い、部屋を飛び出し、外へと出る。
外へ出ると、雨だった。
そうだった、あまりの事態に忘れていた。
傘を、傘を部屋から取ってこなくちゃ。
その間に事務所の自動ドアはゆっくりと音もなく閉まり、私は爪先を打ち付けた。
痛かった。
傘も差さずに数歩歩けば、水溜まりに足を突っ込んだ。
裾まで濡れた。
傘を、取ってこなくちゃ、部屋から……。
違う、誰にも会いたくない。
そうだ、今日は、非番、じゃないか。
私は一体何をしているのか。
ぼうっとしている私の身体を霧のような小雨が風邪に乗ってしっとりと包んでいく。
湿度は高い。
これではまず文字を具現化する前に滲んでしまう。
私が一番苦手とする天候だった。
道を行く人は傘を差したり差さなかったりしていて、私は濡れる身体が気持ち悪くて、近くのコンビニでビニール傘を買った。
今日は休みだからこのまま戻って部屋でゆっくりすればいいのに、そんな気分になれなくて、濡れた足を引きずるようにして歩いた。
この柔らかな雨にさえ私は負けてしまう。