第30章 【ヒロアカ】Who killed Cock Robin【4】
そう思ったところで、緑谷の気持ちなど知らないオールマイトは「真実」を告げる。
「プロはいつだって命がけだよ。「"個性"がなくとも成り立つ」とはとてもじゃないがあ……口にできないね」
「……でも、僕、あの……オールマイト……」
「人を助ける事に憧れるなら警察官って手もある。"ヴィラン受け取り係"なんて揶揄されちゃいるが、あれも立派な仕事だ!」
「オールマイト!!聞いてください!!僕はあなたから……!!」
「夢見るのは悪い事じゃない。だが……相応に現実も見なくてはな、少年」
「オールマイト!!」
緑谷に背を向けたオールマイトは、静かに屋上を後にした。
彼の声は一つもオールマイトに届かなかった。
こんなにも言葉が届かないなんて。
いつも緑谷を気にかけ、いつだって彼の言葉に耳を傾けていたオールマイトの姿はどこにもない。
それがとても悲しい。
「僕は、あなたから、"個性"を受け継いだんですよ……」
か弱い主張は、彼の心の内にしまわれた。
鉛のように重たくなった足を引き摺って、緑谷はビルを後にする。
【相応に現実も見なくてはな】
【中三になってもまだ彼は現実が見えてないのです】
【本格的に将来を考えていく時期だ!!】
【ごめんねえ出久、ごめんね……‼】
見ないように、聞こえないように、知らないように、忘れようとした言葉たちが、記憶に、脳裏に、鮮明に蘇る。
視界がぼやけて景色が揺れる。
大きな瞳から涙が零れそうになり、緑谷は制服の袖で強く拭った。