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【雑多】いつかどこかで【短編集】

第21章 【呪術廻戦】DOOR【1】






【じゃあまた今度ね】

そう言って彼女たちは別れて「また今度」を待つ。
忘れた頃に「今度」はやってきて、そしてまたお決まりの再会と喜びと簡単な報告を交わす。
彼女たちの間にできた壁は頑丈でとても背が高く、彼女たちにその壁を壊す力などもうとっくの昔になくなっていた。
広がる遮断の中で、彼女たちはずっとそこに立ち続け、開かぬ扉を見つめ続ける。

釘崎はそれが心苦しかった。
この遮断はもう止められない。
この壁をぶち壊すことなどできない。
自分たちの間にできたこの溝を埋める術を見つけられないまま。
あの頃は、小さい頃はこんなもの平気で飛び越えられたはずなのに。
今はそれができない。
嫌だ、怖い、これ以上、壁を作りたくなんて。

そう思っても、壁は高くなるばかり。

その時、釘崎の持っていたスマホが音を立てて鳴った。
耳に押し付け電話に出ると、聞き覚えのある旧友の声がして。

「久しぶり。ううん、元気だけど。どうしたの、突然。え……?同窓会?来週の土曜日?うん、暇だけど。え⁉みんな来れんの⁉行く行く!!新宿で待ち合わせね!!おけ。めっちゃ楽しみ~!!」

ずっと砂嵐だったチャンネルは、ようやく落ち着ける場所を見つけたのか、かちりと音を鳴らした。
五月蠅い砂嵐から五月蠅い居酒屋へと。
でも、その五月蠅さは釘崎にとっては少しだけ安心できるものだった。




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