第30章 【ヒロアカ】Who killed Cock Robin【4】
「"個性"のない人間でもあなたみたいになれますか?」
緊張で震える声が聞こえ、緑谷ははっと目を見開いた。
緑谷の目の前には、筋骨隆々のNo.1ヒーロー、オールマイトの姿があった。
どこかのビルの屋上、見覚えのある風景に緑谷は頭が混乱する。
初めてオールマイトと出会た場所だと気づくのに時間は要らなかった。
だからこそ理解できない。
なぜ、ここにいるのか。
オールマイト、なんで、ここに。
聞きたいことがあった。
知りたいことがあった。
しかし、本当に聞きたいこととは裏腹に、緑谷は自分の夢や憧れを語り続ける。
オールマイトから"個性"を授かる前の彼は、誰よりもヒーローに憧れていた。
誰よりもオールマイトのような人になりたいと願った。
しかし、現実は残酷で優しくはない。
オールマイトは、幼さの残る緑谷に言った。
人々を笑顔で救い出す"平和の象徴"は、決して悪に屈してはいけないと。
私が笑うのは、ヒーローの重圧、そして内に湧く恐怖から己を欺くためだと。
緑谷は心臓が重たくなるのを感じた。
その後に何を言われるのか、彼は知っている。
だから、耳が、脳が、心が、魂が、叫ぶ。
聞きたくない、と。