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【雑多】いつかどこかで【短編集】

第21章 【呪術廻戦】DOOR【1】






「あら、やっぱり野薔薇じゃない。そうじゃないかと思ってたのよね」
「真依~。久しぶり。胸大きくなったんじゃない、また」

結婚式会場の出入り口。
式は既に終わったのか、会場にいる人たちは2次会会場へと行く準備をしている。
2次会に行くつもりがない釘崎は、そのまま帰ろうと歩き出したが、その時に後ろから聞き覚えのある声がして振り向いた。

そこにはかつての旧友の姿があって、思わず釘崎は抱きついていた。
当たる胸の大きさを確かめて、冗談交じりの言葉に二人ともクスクスと笑いながら昔のことを思い出し、懐かしさに浸りそして現実へと意識は戻る。

「そうなのよ、でも25で成長止まちゃった。Hカップになるんじゃないかってひやひやしたわ」
「もはやホルスタインだね」
「誰が牛よ」

また二人で笑った。
こんな風に冗談を言って笑える友人、滅多にいるものではない。
冷たくなっていた安心が、熱を取り戻していくのがわかった。

「それより、野薔薇も結婚式に出席してただなんてね」
「うん、新婦が会社の同期なの」
「私は新郎の方。こんな珍しいこともあるものなのね」
「偶然ね」
「偶然って言わないの。何分の一の確率で会う事もあるって私の尊敬する人が言ってたわ」
「いいこと言うね、その人」
「でもここだけの話、あんまりいい式じゃなかったわね」

軽いため息と共に真依はそう零した。

「2年前と比べてるんでしょ、桃の結婚式と」
「だって、あの時泣けたじゃない」
「私はあんたのぐっしゃぐしゃな泣き顔に大笑いしたけどね」
「あんたはこの後の2次会行くの?」
「ううん、行かないよ。明日仕事だから。真依は行くの?」
「ええ、付き合いでね」
「それは大事にしないといけないわね」
「面倒だけどね」
「………あのさ、真依」
「何よ」
「また……、5人で集まりたいね」
「そうね。みんな今頃何しているのかしら。……そろそろ行かなくちゃ。みんな待ってる。じゃあ、野薔薇、また今度ね」

手を振って。また、今度ねと。
笑った。
遠くなる背中を見送って。
瞬き一つ。




ザーッ。

砂嵐と共に、再びチャンネルが変わり景色も変わる。
軽快な音楽とともに、賑わう人々のざわめき。
結婚式会場から遊園地へとチャンネルは変えられた。




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