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【雑多】be there【短編集】

第29章 【七海龍水】煙の向こう、恋をする








リップ音とともに離れる彼の唇が愛おしいけど、これ以上は求めてはいけない。
そう思った。
だけど、龍水は違ったみたい。

「タバコの味すら、貴様と混ざれば甘くなるんだな。……フゥン、恐ろしい女だ」
「な……にを言っているんです?」

本当に何を言っているんだ。
理解が追い付かない。
なにがどうすればタバコ臭い女とのキスが甘くなると言うんだ。

「はっはー!いずれ俺が暴いてやる。貴様が他の誰にも見せない顔も―――煙の中に隠した本音も、全てな!!……その時に俺の本音も貴様は理解できるはずだ」

龍水は親指の腹で私の唇をそっとなぞり、もう一度キスを落とした。
今度は深く、甘く、長く。
まるで、はじめからそうであったと言わんばかりのキスに私は自然と涙が零れた。

春風が私たちの周囲を流れていく。
煙の代わりに、愛しさだけがふわりと空へと溶けていった。

手を繋いでみんなの所へ戻る最中、龍水に気持ちを伝えていなかったことに気づいた。

「龍水」
「なんだ」
「……好きだよ、龍水のこと。離れたくないって思うくらい」

自分の気持ちを素直に伝えると、龍水は驚くでもなく当たり前だと得意顔するでもなく、頬を染めて目を細めて嬉しそうに笑った。





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