第21章 【呪術廻戦】DOOR【1】
振り返らずに進むため。
変わらないものを受け止めるため。
広がるものは止められない。
進むほどに比例する。
頼れたものは身を休め、流れゆくものに背を向け、彼らは彼等の道を歩み続ける。
そして彼らは彼等自身に語り掛ける。
「野薔薇ちゃん!!夢はなんですか、おおきくなったら何になりたいですか、大きくなったら何がしたいですか」
瞬きをすれば、硝子は煙草を吸っておらず、名前も「釘崎」から「野薔薇ちゃん」へと戻り、先ほどの大人のような雰囲気もなく、いつも通りの、釘崎の知る、小学2年生の硝子がそこにいた。
だが、釘崎の頭の中ではずっとさっきまでの異様な硝子の雰囲気と硝子の質問がぐるぐると脳内でリフレインしていた。
【夢はなんですか】
何度も何度も同じ質問が、落ち着いた声で何かを諭すような物言いでずっとずっと繰り返し繰り返し。
頭がおかしくなりそうだった。
釘崎は何も聞きたくないというように力強く己の耳を塞ぎ、そして叫んだ。
「私は……私は、夢なんかない!!!」
勢いよく教室を飛び出す釘崎。
その様子を生徒たちは黙って見ていた。
シン、と静まり返る教室の中。
硝子は再び煙草に火をつけて、煙をくゆらせる。
生徒たちは、子供たちだった彼らは、硝子に目をやった。
彼らの視線を受け止めながら、硝子は教室を出て行った。